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顧客との共創~開発物語


「感覚的なニーズに応えたい」 研究開発本部 機能材料研究所 不織布材料グループ
肌にやさしいとは? 厚くて薄いおむつって?

基本機能から感覚的機能へ

紙おむつが布おむつの代替として誕生した1963年以来「もれない、むれない、かぶれないという基本機能」は徐々に当たり前となり、「快適性やフィット感という感覚的な機能」への要請がどんどん高まっている。当社グループは、独創的な技術開発により、次々とこれらの要請に応える高機能・高性能化を実現。プレミアムタイプおむつ向け高機能不織布のアジアNo.1の地位を築いてきた。
2016年、従来の機能に加え、世界で初めて「快適性」を向上させることに成功した「肌にやさしく、デザイン性に優れた」実用的な不織布の開発で、「日化協技術特別賞」を受賞。
使用者が紙おむつに求める「肌にやさしい」とは何か。それは、肌荒れなどを引き起こしにくい快適性、肌に直接触れることで感じるソフト感、これを損なわずに動きに追随するフィット感など。これらの感覚を「なめらかさ」「ふんわり感」「フィット感」といった独自の評価指標に落とし込み、樹脂設計や繊維形態を制御することで、新たな高機能不織布の開発に成功した。

伸縮不織布の誕生

1990年代後半、当時主流の糸ゴムを使った締め付け感やストレッチフィルムの通気性の悪さを一変する「下着のような履き心地のおむつ」の追求から、当社グループの伸縮不織布の開発が始まった。
伸縮性と触感の両立、そして他社との差別化を図るため、加工は難しくなるが、「敢えて他社が参入していない特殊な樹脂を混合した不織布」に挑戦。量産化のために、樹脂設計や設備、さまざまな工程の改良を重ねた。その中で、長い付き合いの装置メーカーから異なる業界で使われる技術を紹介され、検証。今、この技術を改良し重要な工程に採用している。社外のネットワークや異分野の技術を取り込む柔軟さも、今の成功に結びついた1つの要因である。
2005年に実機での試作が成功。テスト販売を経て2007年に上市。2010年から本格的に採用が拡大した。ここからさらに開発を重ね、現在の伸縮性をもつ繊維と快適性・耐久性に影響する繊維を組み合わせた高伸縮性不織布の開発に至っている。

より感覚的なニーズの対応へ

「厚くて薄い不織布が欲しい」。この一見矛盾した顧客からの要望。これは買ってから捨てるまでの過程での使用者の感覚的なニーズに応えるもの。「おむつ1パックにたくさん入ってコンパクト。でも手に取った時にはふっくら触感がいい」。要望をかみ砕き、たどり着いたのが「クッション性」と「なめらかさ」。これらを指標にテストを重ね、らせん状に立体制御した捲縮繊維を開発。らせん構造は厚みができ柔らかいが、バネの原理で弱い力で押しても薄くなる。
最も重要なのは、このおむつが最終消費者に届き、柔軟性を感じてもらうこと。そのためにはおむつに加工する顧客との対話を繰り返し、共に創り出していくコラボレーションが欠かせない。
らせん状繊維により今までにない3次元的な「ふんわり感」を実現した柔軟性不織布。樹脂の特性を生かした2種の繊維で実現した高伸縮性不織布。いずれもノウハウのかたまりで、他社には生産できない。樹脂メーカーの知見を活かした当社グループの高機能不織布があってこそ、ふんわりスリムな新しいデザインのおむつが可能になったと自負している。

顧客、さらにその先の顧客に満足していただきたい。この想いで、今後も多様化するニーズに応え、さらなる高品質化に向けて開発を続けていく。

「車載カメラ向けレンズへの挑戦」 研究開発本部 高分子研究所 材料開発グループ

車載向けレンズに求められる特性

アペル®は透明で高屈折・低複屈折が特長の光学樹脂で、湿気や薬品にも強い。光ピックアップレンズ向けに圧倒的なシェアを持ち、また、スマートフォン等のモバイルカメラの撮像レンズの凸レンズ向けに高い採用実績を誇る。
アペル®の次なるターゲットは、搭載の急速な増加が見込まれる車載向けレンズ。View Camera(車内外の情報を車内ディスプレイに表示・記録)やSensing Camera(車内外の情報を検知・分析し、自動制御)への参入である。自動運転の実現に向けた開発が加速し、その運転支援システムとなるカメラ性能の大幅な向上が求められている。薄さや画質といった機能を求めるスマートフォン向けと異なり、車載向けには長期信頼性が最優先。熱や湿度などの耐環境性、黄ばみ、変形などにおける要求性能も格段に高い。現行性能ではガラスレンズが上を行く。
ただし、今後、車載カメラ台数は2020年までに現在の8000万台程度から2倍以上に増える見通しで、レンズ設計の自由さや量産化、コストメリット等から、プラスチックレンズヘ置き換えが進むことが見込まれる。

2013年、当社は車載向けレンズ専用設計に着手。光学特性と耐環境性を高いレベルで両立することは難しく、顧客の厳しい要求性能に応えるために、試行錯誤を繰り返した。樹脂メーカーとして蓄積したノウハウが鍵となり、半年後、耐熱性や耐環境性を始めとする性能を確保。2014年秋には量産化にも目途を立て、車載カメラのレンズ材料としての採用が決定した。2016年度中には量産を開始、2017年度には実際に自動車に搭載される見通しだ。


開発力の源泉

この開発の過程でいくつかの信頼関係が、開発の大きな推進力となった。
その1つは顧客であるレンズメーカーとの信頼関係。試作品を製作し、評価してもらう過程で、顧客から実際のレンズ金型をモデルにした評価用金型を設計・製作してもらうことができた。顧客の要求性能に見合う製品開発を進める上で、顧客と社内とで同じレンズを作り評価できることはベストである。これは、顧客との信頼関係を築いていった結果。厳しい要求もアペル®への期待の高さであり、その期待に応えたいという私たちの思いも強まっていった。
もう1つは社内の製・販・研のコミュニケーション。顧客への提案前、評価スケジュールを営業担当者がいち早く把握し、情報を共有。それに向かって一丸となって開発を進めた。製造部門にはスマートフォン向けにフル稼働の中で、プラント実機での試作を最短スケジュールで対応してもらうことができた。
2013年春にスタートした開発が1年あまりで採用決定にこぎつけられたのは、この社内外の関係者が、同じビジョンに向かって共に創りあげた結果だと感じている。

さらに大切になる信頼関係

樹脂メーカーは樹脂を売って終わりではない。最終製品である車載カメラやセンサーとして性能を発揮することが最終目的である。顧客先で精密さが求められるレンズを安定的に作り続けられることが重要だ。そのために、加工装置との相性や作りやすさという意味での物性向上にも努め、また、製造トラブルの際には装置メーカーとも共働して改善に協力することも、樹脂メーカーの責務でもある。

究極は、熱や湿度が高くても光学特性が全くブレないレンズ。アペル®を存在感あるレンズ材料として磨きをかけ、車載カメラやセンサーの性能向上を加速させる。