特集(3)夢
化学のちからで沙漠に緑を内モンゴルでの挑戦
中国・北京から北東へ900キロの内モンゴル自治区通遼(トンリャオ)。三井化学の千葉地区「地球サポーター」* たちは、ここをベースに黄砂の発生源でもある沙漠の緑化に取り組んでいます。それは、単なるボランティア的活動ではなく、三井化学の技術と製品が、現地の持続的な発展を支援できるかどうかを見極める検証作業でもあります。
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- 地球サポーター:環境について、様々な視点から考える三井化学社内の勉強会。

内モンゴル自治区で実証実験をスタート
千葉地区「地球サポーター」12人は、自らのテーマとして内モンゴル自治区の沙漠緑化を選び、活動を始めました。NGOや現地の大学教授の協力を得て、初めて通遼に訪問して小実験を開始したのが2007年9月。2008年5月には再び現地を訪れ、前回の実験結果を確認するとともに本格的な実証実験に入りました。
実験は、植生ポット(生分解性)と植生基盤にポプラ・マツ・サージの3つの苗木を植え、沙漠の砂地とアルカリ土壌地に分けて育ち方を比較します。土に植えた後1~2年で土に還るのが植生ポットで、植林をするときの土台として保水性が高く、植林後も水に困らないような素材でできているのが植生基盤です。植生基盤には間伐材を固めたものが使われます。5月の訪問では、植生ポットを200個、植生基盤を374枚使い、それらを使わないものも含め約900本の苗木を植えました。
沙漠化のジレンマ“アルカリ土壌”に挑む
この活動には、三井化学の技術や製品をうまく役立てたいという観点から、生分解性プラスチックを研究している門坂綾子、植生基盤を研究している伊藤武志も参加。門坂は、「化学材料と自然との折り合いをつけるための新たな手法が必要だと感じています」と語り、伊藤は、「沙漠は水さえあれば植物は育つ。しかし、現地に水道インフラはなく、さらにpH9という植物が育ちにくいアルカリ土壌で、この土壌改質が重要であることがわかってきました」と語ります。
実際、現地の沙漠では別の日本企業が協力してポプラの苗木を植えるなどの活動がなされていますが、ポプラは生長が速いが故に土中の水分を大量に吸収し、土壌のアルカリ化を促進してしまうジレンマがあります。メンバーの一人である岩毅は、「それだけ化学会社としてサイエンスの力を投入できる余地があるということ。アルカリ土壌対策技術はまだ十分に確立されていないので、企業だからできるという可能性を追求してみたい」といいます。
沙漠緑化と次世代の未来
2008年5月の訪問では、通遼の中学校と高校で三井化学の事業や沙漠緑化への取り組みを紹介しました。高校で、日本の生活や街の様子を紹介したメンバーの黒澤一は、「私たちの千葉の工場が住宅や畑と共存していることに皆、驚いていました。日本の環境技術の現状を伝えられたのはよかったのですが、高校生から『地元経済が発展すれば沙漠化がさらに進むが、その折り合いをどのようにつければよいか』と質問されたときは、環境に対する意識の高さに驚きました」と振り返ります。
地球サポーターの事務局の福田立子は、「計画から2年ほどでここまでこれたのは、夢のような活動に見えて実は、地に足が付いた活動だからでしょう。三井化学にとってはとてもエポックメーキングな活動になると思います」と語ります。
2008年9月にさらに現地を訪ね、苗木の成長を検証します。伊藤は、「今回植えたサージはレモンよりも酸っぱい実を付けます。実が土地に落ちて土壌が中和するようなら最高ですね」と期待を膨らませています。



三井化学のMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)を使用した植生基盤
実験に使用した当社独自の易崩壊型生分解性ポット
三井化学の緑化活動に期待しています
内モンゴルの沙漠化は草原の劣化です。放牧ができなくなり、牧民生活を直撃しています。また、黄砂に代表される大気汚染を引き起こし、地球規模の問題となっています。1980年代から植林が実施されていますが、沙漠は拡大し続けており、沙漠化の歯止めをかけられていません。緑化、植林に対する技術を取得していないことが大きな原因なのです。
三井化学が実験を通じて、内モンゴルにおける沙漠化防止のための緑化技術を飛躍的に前進させ、現地住民に土壌改良の道筋を導いてくれることを期待しています。

ボリジギン・セルゲレン氏
内モンゴル沙漠化防止植林の会代表

