進捗報告1【化学的CO2固定化】
究極のリサイクルへ一歩前進
CO2から化学原料となるメタノールをつくる。従来の常識をくつがえす新技術の実用化をめざして、実証プラントが稼働してから1年。”究極のリサイクル“に向けて大きな成果を得るとともに、取り組むべき新たな課題も見えてきました。

実用化に向けて一つの山をクリア
三井化学では(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)のCO2固定化プロジェクトに参加し、CO2と水素からメタノールを合成する触媒の開発を続けてきました。2009年には大阪工場内に実証試験プラントを建設し、排ガスに含まれるCO2を原料としたメタノール合成技術の実用化に向けた運転を開始しています。
実証試験の目的のひとつは、純粋なCO2でなく実際の工場排ガスを使うこと。NOxなど様々な成分も含まれる中からCO2を分離精製して原料に使います。もうひとつは工業化レベルの使用に耐えうる触媒を実現することでした。
「本当にメタノールができるのだろうかとおっかなびっくりでしたが、想定した品質のものができました。ひとつの山をクリアしたと考えています」と、語るのは実証試験プラントの建設・運転を総括している生産技術センター主席研究員の松下達己です。
とはいえ、試験は決して順調だったわけではありません。当初はトラブル続きで、安定的な連続運転ができず「焦った時期もあった」といいます。同時に、新たな課題も見えてきました。
「思ったより電気や蒸気を使っています。エネルギー収支まで見てトータルでCO2が削減できなければ、このプロセス自体が成り立たなくなる。しかし、そのための条件も明らかになってきました。」
2010年は工業化プロセスの設計、ビジネスモデルの検討へ
「これらの課題をクリアするため、2010年度は既存技術にさらに革新的な技術をプラスして、省エネ化を進めていく計画です。そして水素の確保。現在工場から排出された副生水素を精製して使っていますが、これもまずはコークス炉などの副生水素をそのまま使えるようにするなど、水素源の幅を広げることに取り組む予定です」(松下)
将来的には太陽光などの自然エネルギーを使った水の分解によって水素を得ることが目標です。そのために光触媒などの開発も進めています。つまり、CO2と水からメタノールができることになります。松下は期待を込めて語ります。
「このプロセスからはメタノールとともに水ができます。その水から水素を発生させれば、カーボン+水の究極のリサイクルが完成するわけです。将来化石燃料が不足したときにも化学原料や燃料が得られるという面で画期的です。」
2009年の発表以来反響は大きく、海外からの視察申し込みも相次いでいます。 「実用化に向けては2010年度が勝負の年。これまでの技術でも『できた』といえるとは思いますが、それをもう一回りよくするための改造を加えます。同時に、数十万トンクラスの工業化プロセスの設計も始めます。」
CO2源のあるところが有利なのか、水素源のあるところがいいのか、それとも自然エネルギーが豊かな場所か……。三井化学は、究極のリサイクルに向けて様々な部門が連携し、ビジネスモデルの検討にも着手し始めています。

生産・技術本部
生産技術センター
ケミカルプロセスユニット
主席研究員
松下 達己
化学的CO2固定化の概念

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- RITE「化学的CO2固定化プロジェクト(1990~1999年:NEDO委託事業)」の共同研究開発成果。



